Migraine Free(片頭痛ゼロ)を治療目標にする時代へ
片頭痛を英語でMigraine「マイグレイン」と発音します。有名な片頭痛治療薬「イミグラン」は「Migraine」から母音などを省略・アレンジして、覚えやすく親しみやすい響きとして名付けられました。
6-7月。
毎年この時期になると、気圧の変化や寒暖差、新生活開始からしばらく経過したストレスの蓄積などから片頭痛が悪化し、つらい思いをされている患者様が増えます。
「頭痛薬を飲んでも効かない」「吐き気で薬が飲めない」「市販薬を毎日のように使ってしまっている」――そんなお悩みを抱えている方は、決して少なくありません。有病率は30代女性で20%とも報告されています。
そんな中、片頭痛治療の「ゴール」そのものが大きく変わりつつあることをご存知でしょうか。
これまでの片頭痛予防治療では、「頭痛の頻度が半分以下に減れば治療成功」という考え方が一般的でした。
しかし国際頭痛学会(IHS)は2025年、片頭痛予防の基準をより高く設定すべきだとするポジションステートメントを発表し、月間の片頭痛日数が単に半減するだけでは生活の質が十分に回復しない場合があると指摘した上で、「Migraine Free(片頭痛のない状態)」や、片頭痛・中等度~重度の頭痛がほとんどない状態といった、より野心的な治療目標を目指すべきだと提唱しました。
具体的には、月間の症状負担を4段階で評価する枠組みが示されており、片頭痛や中等度~重度の頭痛が月に1日もない状態を「Migraine Free」、月4日未満を「最適なコントロール」、4~6日を「中等度のコントロール」、6日を超える場合を「コントロール不十分」と位置づけています。「発作が半分に減ったから、まあ良し」とするのではなく、「発作のない日常」そのものを目指す――これが世界の最新の治療理念です。
この理念の転換を後押ししているのが、まさに近年登場した抗CGRP関連製剤です。
6年前に登場したこの薬はしばらく月に1回の注射製剤のみでした。これらも非常によく効くお薬ですが、昨年12月から立て続けにゲパントと呼ばれる新しいグループの飲み薬が登場しています。
ナルティーク(リメゲパント) は、急性期治療と発症抑制(予防)の両方に使える経口薬で、水なしで服用できる口腔内崩壊錠です。発作の早い段階で頓服することで、つらい頭痛発作を早期に和らげられるケースもあります。
アクイプタ(アトゲパント) は片頭痛発作の発症抑制に特化した薬で、通常60mgを1日1回、毎日継続して服用します。毎日続けることで、発作そのものが起こりにくい状態を目指す薬です。急性期治療としても現在効能追加申請中と聞いています。
どちらの薬も、従来のトリプタン製剤とは異なる作用機序で血管収縮作用がないため、トリプタンが効きにくい方や使いにくい方の新たな選択肢となります。そして何より、「月に何日か痛みを我慢する」のではなく、「Migraine Free」、つまり発作の不安からも解放された状態を目指せる時代になってきています。
片頭痛は「我慢するもの」ではなく、「適切に治療できる病気」です。市販の鎮痛薬を頻繁に使用していると、かえって頭痛が悪化する「薬物乱用頭痛」につながることもあります。「以前よりは良くなった」で治療をやめてしまわず、ご自身が目指せる状態について、ぜひ一度ご相談ください。
